宮古のすし界に現れた
ニューウェーブ

一日一組限定、メニューはたったひとつ、「すし懐石のコース」のみというのが若尾寿司のスタイルだ。しかもその代金は飲み放題がセットになって驚きの一人6000円（税別）。ある意味、価格破壊であり、宮古のすし業界の常識を揺さぶる経営方針だ。しかし、その一方で堅実な姿もある。それが若尾ずしのもうひとつの顔である持ち返りのすし。朝の10時になると若尾寿司の店頭には、握りはもちろん、太巻きや稲荷ずし、納豆巻きなど庶民的な持ち帰り専用のすしがずらりと勢揃いする。

すしをリーズナブルに美味しく。それが若尾寿司の二代目大澤岬さんのモットーだ。夜のコースは高級なネタを惜しげもなく使うが、それを可能にしているのが100人前を超える持ち帰りずしの存在だ。持ち帰りずしのためにネタを大量に仕入れ、回転させているからこそ、すし懐石ではコスパと質の高さを維持できるのだという。「新鮮なネタを毎日仕入れるのがすし屋の基本」と語る大澤さん。若尾寿司は旨いすしをつくるため、愚直なまでにそれを続けている。

職人としては、まだまだ若手の部類に入る大澤さんだが、握りの技術には自信を見せる。毎日100人前以上のすしを握っているのだからそれもそのはずだ。若い職人らしく、小気味よく握っていく姿は見ていて気持ちがよい。積み上げた量が質になるのは職人仕事の本質である。そんな大澤さんが手がける一日一組限定のコース料理は、刺身に焼き物、揚げ物、煮物、そして10貫のにぎりへと続く、まさにフルコース。「ほかの店ではできないことをやりたいと思ってはじめたのが、夜のすし懐石」と語るだけあって、若尾ずしだけの最高の贅沢が楽しめる。

ネタは輝くほど新鮮。器の美しさにもこだわる。

清廉なたたずまいを見せる穴子。ツメも澄んで美しい。

優しい甘みを感じさせる玉子焼き。素朴で深い味わい。

地酒をはじめとするドリンク類はすべて飲み放題。

持ち帰りのすしは多彩なラインナップ。価格もお手頃。

店舗情報